輪島塗の豆知識

1.輪島塗とは

輪島塗は、石川県輪島市で受け継がれてきた、日本を代表する漆器のひとつです。木地づくりから下地、漆塗り、加飾に至るまで、それぞれの工程を専門の職人が分業して仕上げる、非常に手間と時間のかかる漆器です。その特徴は、単に美しいだけではありません。木地に布を着せ、輪島地の粉を用いた下地を幾重にも施すことで、丈夫で長く使うことのできる漆器に仕上げられています。日々の暮らしの中で使いながら、世代を超えて受け継いでいく。
それが輪島塗の大きな魅力です。

2.輪島塗の特徴

輪島塗の大きな特徴は、**「丈夫さ」「美しさ」「長く使えること」**です。
輪島塗では、輪島で採れる珪藻土を焼いて粉末にした「輪島地の粉」を下地に使用します。さらに、木地の弱い部分には布を貼って補強し、何度も下地を重ねていきます。その上に漆を何度も塗り重ね、最後に蒔絵や沈金などの加飾を施します。一つの器が完成するまでには、多くの職人の手仕事と長い時間が必要です。
使うほどに愛着が生まれ、修理をしながら長く使い続けられる。
それも輪島塗ならではの魅力です。

3.なぜ輪島塗は丈夫なのか

輪島塗が丈夫なのには、理由があります。
その大きな秘密が、**木地をしっかりと補強する「布着せ」と、何層にも重ねる「下地」**です。
木地の接合部分や傷みやすい部分には布を貼り、その上から漆と輪島地の粉を使った下地を何度も施します。
こうして木地をしっかりと守った上で、さらに漆を塗り重ねて仕上げていきます。
表面の美しい漆だけでなく、見えない部分にまで手間をかけて強度を高めていることが、輪島塗の丈夫さにつながっています。

輪島塗の工程

木地 ― 漆器の土台をつくる

輪島塗づくりの最初の工程が「木地」です。
器の形や大きさ、用途に合わせて木材を加工し、漆器の土台となる形をつくります。
木材は種類によって性質が異なるため、器の用途や形状などを考えながら適した材料を選びます。
木地の仕上がりは、その後の工程や完成した漆器の美しさにも大きく関わります。
美しい輪島塗は、まず丈夫で美しい木地づくりから始まります。

椀生地 (わんきじ)

曲物木地 (まげものきじ)

指物木地 (さしものきじ)

朴木地 (ほおきじ)

布着せ ― 木地を補強する

木地の中でも、特に傷みやすい部分や強度が必要な部分には、麻布などを貼って補強します。
これを「布着せ」といいます。
布を貼った部分に漆を含ませ、下地を施すことで、木地の弱い部分を守り、漆器全体の強度を高めます。
完成すると布は下地の中に隠れて見えなくなりますが、漆器を長く使うための大切な工程のひとつです。

下地 ― 輪島塗の丈夫さを支える

輪島塗を特徴づける重要な工程のひとつが「下地」です。
輪島塗では、輪島で採れる珪藻土を焼いて粉末にした「輪島地の粉」を漆と混ぜて下地に用います。

下地を一度で終わらせるのではなく、塗っては乾かし、研ぐという作業を繰り返しながら、少しずつ表面を整えていきます。
この丁寧な下地づくりによって、木地を保護するとともに、上に塗る漆を美しく仕上げるための土台がつくられます。
完成後には見えなくなる部分だからこそ、職人は手を抜かず、丁寧に仕上げます。

上塗り ― 美しい艶と深みを生み出す

下地が整った木地に、漆を塗り重ねていきます。
漆は気温や湿度によって乾き方が変わるため、その日の状態を見ながら、職人が一つひとつ丁寧に作業します。
塗って乾かし、表面を整え、また塗る。
この作業を繰り返すことで、漆器ならではの深い色合いと美しい艶が生まれます。
黒、朱、溜など、漆の色にはそれぞれ独特の深みがあります。
使い込むほどに味わいが増していくことも、漆器の大きな魅力です。

呂色(ろいろ) ― 本来の美しい艶を引き出す仕上げの工程

塗り上がった漆の表面を、炭などを使って細かく研ぎ、さらに漆を使いながら磨き上げていきます。
職人が表面の状態を確かめながら、わずかな傷や凹凸を整え、漆ならではの深みのある光沢に仕上げます。
呂色を施すことで、輪島塗特有のしっとりとした艶と奥行きのある美しさが生まれます。
光を強く反射するだけではない、漆の中から光が浮かび上がるような上品な仕上がりが特徴です。
「塗る」だけでなく、「磨く」ことで完成する。
呂色は、輪島塗の美しさを最後に引き出す大切な職人技です。

蒔絵・沈金 ― 最後に加わる職人の美

漆器の仕上げを彩るのが、「蒔絵」や「沈金」などの加飾です。
蒔絵は、漆で文様を描き、その上に金粉や銀粉などを蒔いて美しい絵柄を表現する技法です。
平蒔絵、研出蒔絵、高蒔絵等の技法を駆使した多様な表現が可能です。

一方、沈金は、漆の表面に刀で文様を彫り、その溝に金箔や金粉などを埋め込んで模様を描き出します。
基本的な線や点の彫りに加え、コスリや片切りなど、刃先の形状によって多様な彫りが得られます。
草花や鳥、風景など、さまざまな意匠が職人の手によって表現されます。

漆器の表面に施された一つひとつの文様には、職人の技術と感性が込められています。
実用品としての丈夫さに、職人の美意識を加えることで、輪島塗ならではの美しい漆器が完成します。


一つの漆器が完成するまで、数多くの工程と職人の手仕事があります。
大藤漆器店では、こうした伝統の技を大切にしながら、これからも輪島塗を皆様の暮らしへお届けしてまいります。